3<寮>

 副会長の先輩は、一番大きいレンガ色のやつが本館だと言い、それから少し離れたところに建っている白い二つの建物が寮だと言って簡単な説明をしてくれた。

 寮は五階建てで、西館の一階は談話室や病院代わりの医務室、生活必需品を買うためのコンビニや参考書などが買える本屋があるらしく、金持ちの学校はすごいなと俺は正直思った。
 ここは学力で学費を免除されない限り、一般中流家庭程度では逆立ちしても払えないくらいの授業料らしい。何をお高く止まってんだと思ったが、そういう設定でも入学希望者が多く倍率がえらい事になってるというのだから、納得せざるをえなかった。

 需要に比べて供給が少ない場合、料金が跳ね上がるのは自由経済の基本だ。

 というか、俺の学費は一体どうなってるんだろう。
 陽丘さんはフツーに学費なんか気にするなって言ってたけど、気にしなくていいレベルの金額じゃないよな? 今度聞いてみよう。
 俺ひとりに残されてしまった佐倉家の貯金は結構あるはずだ。例の特殊事情、万歳?

 それから、二階と三階が一年の部屋、四階と五階が二年の部屋で、東館の一階から四階までを三年が、それから五階を生徒会の人間が使っているという話だった。
 この学校では一、二年まで相部屋で、受験生になる三年からは一人部屋になるらしい。それも結構セレブな感じだと思ったけど、生徒会の人間になればさらにセレブなお部屋が東館の五階に用意されているというのだから俺はもうついていけない。

 ちなみに、西館と東館はちゃんと連絡通路で繋がっている。

「………………」
 で、今現在の俺はというと、自分の部屋だと言って案内された東館の四階で、カードキーを持たされながら立ちすくんでいたりする。
「東館の四階って三年生のだって言わなかったっけ……」
 すでに副会長先輩はじゃあねと言ってどこかへ去っていってしまった。
 よく考えたらそうだ、授業時間なんだ。俺の案内が終わればすぐ戻るようにとか言われてるんだろう。
 それにしたっていくら生徒会の人間だからって、授業時間内なんだから、手の空いてる教師とかをまわせばいいのに。

 そしたらなんで俺が東館の四階に部屋を割り当てられたのか説明してくれる時間もあっただろう。
「……途中編入だから?」
 倍率の高い学校だ。きっとフルで入学生を受け入れて、部屋は満室だったとか、そんなことだろう。たぶん。

 ……なんか、でも寂しいよな。
 同じ学年、クラスメイトと、棟さえ違うようなところに一人部屋があるなんて。
 しかも回りはみんな三年! いくらダブってるとはいえ、三年生はきっちり年も先輩だ。
 気ィ使うしな……。
 まあしょうがない。学校に通えるようにしてくれたってだけでも感謝しないと。

 カードキーをぴぴっと読み取る機械? に通すとロックが外れる音がする。
 いい加減重たい荷物を降ろしたかったので俺は部屋のドアを開けた。

「…………ひっろ」

 ここはもしかして、子供OKの新婚向け高級マンションですか?

 訊ねたくなるくらいに開放感溢れる素敵な空間が目の前に現れた。
 ホテルですか、と聞かなかったのは、シンプルな家具が数点しか置かれていなかったその印象のせいだろう。

 玄関の横には、不法滞在者を何人も匿えそうな程、たくさん靴が入れられる下駄箱がある。
 それから少し廊下が伸び、その右側にはベッドルーム、左側にはトイレや洗面、風呂などの水回り系。で、一番奥にリビングみたいにくつろげる広いスペースがあった。
 うわ、簡易キッチンまであるし。テレビもちゃんと付いてる。しかも壁に埋まってるやつ。

 えーっと?
 リビングは友達呼んでくつろぐ為に使って?
 勉強したり寝たりするのはベッドルームがあるってことですか?
 うわ、風呂のバスタブも広い。

 副会長先輩の説明で、大浴場系の風呂がないなーと思ってたら、こういうことだったのか。
 各自の部屋にあるわけね。立派なのが。

「……とりあえず、荷物」
 リビングルームにあったソファの脇に鞄を置く。別で送った荷物は既に届いていて、部屋の端にちゃんと置かれてあった。
 それからそのソファの上にダイブして寝転がる。わ、いい感じに沈み込んで気持ちいい。

「………………」
 なんか、新しい自分の部屋の中にいると、新生活ってものを実感してくる。
 初登校は明日で、今日はあとで理事長室を訪ねる用事が残っているだけだ。それもまだ時間がある。
 ってなわけで、俺は少し一眠りすることにした。