103<テレパシー>

「おら、ちゃんと飲めよ」
「んっ、っぐ、ぅ」
 どこにも逃げられない状態のまま、圧し掛かられて、顎を押さえつけられて口を開かされる。
 小瓶に入った得体の知れない液体を口に流し込まれて、冷や汗が出た。
 毒な気がする。
 絶対体にいいもんじゃない気がする。
 飲んだら駄目だ、ろくな事にならない。そう思うのに、鼻と口を塞がれて抵抗も形にならず、多少こぼれはしたものの、液体は喉の奥に流れ込んでいく。

「……っは、はあっ」
 飲み込んでしまったらようやく解放されて、肺が酸素を求めて息を荒くした。
「お前ほんと、そそる顔するなー。会長がやられたのもまぁ頷けるか」
「……な、にがっ」
「安心しろ、すぐ気持ちよくなる」
「………………」
 やっぱり、飲まされたのはそういう薬らしい。
 この状況で風邪薬とか飲まされるわけないのは分かってたけど!
「これって何だっけ、即効性?」
「確か。そう書いてたぜ」
「へえー。楽しみ。しっかり撮っとけよ」
「分かってるって。あとで替われよ」

 6人は口々に色んなことを好き勝手言っている。聞き取れただけでもそんな会話が聞こえてきて、どうせなら睡眠薬とかの方が良かったと思った。
 寝ている間に済ましてくれるならそれに越した事はない。
「……う、ぅ」
 体が熱いのなんて、気のせいだ。
「おっと、さっそく?」
「いいカオー。ほら、目ぇつむんなって。カメラ見ろよ」
「佐倉ちゃーん? ほら、気持ちいいって言ってみなよ」
 胸を触られた。

「やめろっ! さわんなボケ!」
 限界だ。もう無理だ。降参する、もう充分だ。
「ふざけんなっ! ちょっ、摘むなっ、いっ」
「あははは。かわいー」
「っく、うぅぅっ」
 カチャカチャ音がする。
「やめろ!! 消えろ! 俺にさわんな!!」
 ベルトを外されるのを制止したいのに、数人がかりで足を押さえつけられているせいでできない。
「わめくなって、諦めろよ」
「楽しめお前も」
「嫌だ!!」
 叫んでる間に、ジーンズが足から抜き取られる。
 下着まで下ろされて、もう声も出なかった。

「はい恥ずかしい格好ー」
「ばっちし写ってるぜぇ」
「……っ、っっ」
 有り得ない! こんなことになる羽目になるなんて!
 一生自分には関係ないと思ってた……!
「んー。まだ効きが甘いかー?」
「もっと飲ませる?」
「まだあんの?」
「あるある」
「ばっ、馬鹿やろっ、やめっ」
 カメラが近くに寄ってくる。
 ふざけんなと思うのに、あちこち押さえつけられて満足にもがくことさえ出来ないまま、また薬を流し込まれる。
 その間、手が何本も体中を這い回って、覚えのある感覚に気付いてしまった。

「や、めろ……っ、んっ、ムぅ」
 飲まないように必死で顔を背けたおかげで、流し込まれた内のほんの少しは口からこぼれて頬に伝った。
 けど、そんなものはどうでもいいくらいに既に飲み込まされている。
「ふ……んゥ、っく」
「おっとおっと。ちゃんと感じてんじゃん」
「誰か下も触ってやれよ」
「よしきた」
 どこかふざけた調子の会話が、遠くに聞こえる。
「ひっ、……っあ」
 急に掴まれて体が跳ねた。

「うわー、声すごい可愛いねー。もっと啼いてみ?」
「イやだッ! あっ、もうっ、やめ!」
 こんな、ちょっと軽く触られてるだけなのに。
 何だこれ。
 普通じゃない。有り得ない。薬ってこんななのか?
 俺、どうなるんだよ。
「も勘弁して……」
「勘弁だってー」
「許してくださいお願いしますって言ってみな」
「そうそう、かわいーく、な?」
 言ったところでコイツらが本気で許す訳ないことくらい、まだ俺にも判断が付いた。

「…………っ」
「あれ? 言わないのー?」
「つまんねえ」
「そのうち言うって」
「こんなの序の口だもんなー」
「ぅあっ」
 神経の中心を触られたみたいに、体に何かが広がってきた。
 指だか爪だかで思いっきり先を押されたらしい。
「ぅ、っく、ウ」
「歯ぁ食いしばってないで開けてろって」
「いい声聞かせろよ」
「会長にも聞かせたんだろ? それとも全然?」
「つかさ、その前にコイツ転校生だろ? 男免疫あんの?」
「なかったらウケるー」
 コイツらの疑問にいちいち答えてやる義理も義務もなかったけど、それ以上にまず余裕がない。

「そろそろ使おうぜ。せっかく持ってきたんだしよ、オモチャ」
「いいねえ。どれ使う?」
「最初はちっさいのでいんじゃね?」
「……ぁ、……やめっ、嫌……だ」
 聞き捨てられない会話につい目線を向けてしまったら、ピンク色の丸いものを持ってる奴の手が見えた。
「つけてやろうぜ」
「あはは、どこにだよ」
「俺乳首希望ー」
「ほらよ、テープ」
「お前抜かりないなー」
 周囲の軽口を聞いていると、本当に遊ばれてるんだという気になってきて、悔しくて涙が出てきた。

「あーあー、泣いちゃったー」
「早くね?」
「可哀そうに、こんなんされるの初めて?」
「ほら、つけるぜ」
 悔しい。
 怖い。嫌だ。
 腕が痛い。

「……っぅ、う」
 テープで貼り付けられたものが動き出して、死にたくなる。
「もっと喘げよ」
「いっ、……あーっ、くそっ!」
 悪態を突いていないと、口から変な声が出そうだ。
「へえー、まだ余裕そうだぜオイ」
「無くしてやるよ」
 さっきから下をいじり続けてる手が、動きを激しくしてきた。
「ふっ、ン、……クぅっ」
「辛いよなあ? クスリ、2倍だもんな」
「おい、ちょっとズレろよ、これ入れるから」
「うーっわ! 最初からンなの入れてやんの!?」
「容赦ねえー!」
「いけるだろ、クスリ飲ましてっし」

 ふいに周りが声を上げて、思わず視線が彷徨う。
 すぐに見なきゃ良かったと、冷や汗が噴出した。
「ううぅううっ」
 いないとか、外に出てるとか、なんで、こんな時に……!
 ……高嶺っ!
 こんなことされたくない……されたくないんだ……! お前にしかこんなこと許したくないんだよっ、高嶺が好きだっ、高嶺以外は嫌だ……!!
「っか、みねっ、ぅぁ、ばか、やろ」
「んー? 会長に恨み言ー?」
「いいから足開かせろって」
「うわー、この光景、えろ……」
 高嶺、高嶺っ、テレパシーとか、なんでお前使えないんだよ……! こんなに呼んでんのにっ、あいのチカラとか、ないのかよ……!!

「ぃま、なに……っ」
 なぁ、たかみね、今、何してる……?
「っせーの」
「ぅぐっ、っア゛ぁ!!」
 頭ん中を高嶺で埋めてても、死にたい気分は止められなかった。