66<容赦>

「う、く、ぁ」
「あぁ、ここ?」
「だっ、……ちょ、変っ」
 そうとしか言いようがない。
 なんか、もやもやしたよく分からないものの中心を触られてるような……、なんか枕に頭をばふばふしたくなる感じの。
「……ここかぁ。ふふふ。お前の弱点。可愛がってやるからなー」
「誰だよお前っ」
 普段の表情からは想像もできない、やたら嬉しそうな高嶺の緩みきった顔!
 体がこんな状態でなきゃその面張っ倒してやるのに……!

「いやー、予想以上に感極まってる。愛あるセックスは偉大だな」
「何言……っ、ンあっ、あ」
 放置されて久しい場所に突然戻ってきた刺激は、一瞬頭を真っ白にさせる。
「そう。声出していいから」
「い、あ、はぁ」
「だいぶ素直になってきたな」
「ふ……っく」
 いちいち羞恥心をあおる高嶺の言葉は問答無用で目頭を熱くさせてくる。

「いいのか? 泣くほど?」
「は、ちが、ぁ……ぅあ」
「分かってる。恥ずかしいんだろ」
「う、ぅうー」
「お前に言葉責めとかやったら泣かしそうだよな」
 なんか、反発したくなるようなことを高嶺が言ってる気はするのに、もうそれどころじゃない。
「は、ぁ、ア、あ、あ」
 止められない。もうどうでもいい気がする。背中に何かがいる。

「夏樹、すげぇ」
「ぁうァ、アっ、ひっ」
 どこ、なに、……たかみね。
「あぅぅぁア」
「あ、っせるよ、お前」
 いやだ、耳なんて、おかしくなる。
 耐えさせんな、あぁ。
「いや、だっ、ア、なに、だっ、だめだだめっ、ンぁっ」
 もやもやが、一点になって。むき出しの、神経で。
 体が、いう事を利かない。
「やっぱ後ろも触ると……違う? 昨日より、よさげ」
「イ……っ、ぅく」

 怖い、どうにかなる、落ちて、さらわれて……
「あぁああァ……っ」
 息が詰まった。

「……はぁ、……はぁっ」
 なんか呆然としてる……自分。
「よ、お疲れ」
 かけられた声に思わず体がびくりと反応した。
「……は、何……、いまの」
「何って、後ろのイイところ」
「………………」
 もうなんて切り返せばいいのか、さっぱりだ……。
「ははは。お前いちいち顔に出て、好きすぎる」
「……え」

 高嶺は何かごそごそしてて、気付いたら腹をティッシュで拭かれた。
「あっ」
「昨日も今日も無事に出してくれて、何よりだ」
「なななっ」
「あぁ、一昨日も無理矢理イカせたっけ? 三日連続だ」
「てめぇえ!!」
 顔が一気に真っ赤になったのが分かる。
 そうだ! よく考えたら俺、今のでこいつに三日連続……!
「……っしんじらんねえ!」
 なんつー衝撃の事実!

「まぁそう言うなって。なんつーかお前、うん、恵まれてるよ」
「はっ? 何がっ?」
 俺の問い掛けに高嶺は一瞬目を泳がせる。
「いやー、まぁ俺も、何人か相手したけど……」
「…………」
 高嶺の話のふりに俺は沈黙を返した。
 ……何人、で済んでるなら別にいいけどな!
「その中にはまぁ、初めての奴もちらほらと」
「……んで?」
 俺はなるべく無表情を装って続きを促した。
「いや、正直な、初めてでお前ほど良さそうな奴って、いなかったよな」
「…………」
 ほんともう、どう切り返せばいいか分からない……。

「やっぱ向いてるよお前」
「何に」
「……やられる側?」
 俺は無言で高嶺の背中をつねった。
「いぃって!」
「やかましい」
 ほんとなら蹴り上げてやるところだったのが、ズボンが絡まってるせいでつねりに変更になったんだっつーの。

「調子のってんなバカ嶺」
「ははは、乗りたくもなるだろ? 俺マジで浮かれてるし。お前は?」
「…………」
 答えてやるのがどうにも癪で、俺は視線を反らした。
「も、お前喋んな」
「なんだよ」
 にやにや笑ってる高嶺。
 俺は無言で、高嶺のそれを潔く掴んだ。
「なっ」
「余裕なふりしてお前も切ないんだろ」
「お、っまえ……」
「……するから」
「…………まじ?」
 高嶺は心底驚いたみたいな風に呟いた。
「………………」
 自分は人にさんざんしまくるくせに、自分がされるとは思わないわけか?

「やられっぱなしじゃ癪だからな」
「え、三日分のお返し?」
「仕返しっつーんだアホ」
 俺の言葉に高嶺は笑った。
 高嶺は俺の上に覆いかぶさったまま、肘を床について体重をささえている。
 ちょっとばかし乱暴に、わざと音をたてて高嶺のベルトを外した。
「夏樹……」
「え、う」
 キスをされる。
 ぬる、とした感触がリアルに頭をよぎり、一瞬止まりそうになった手を必死で動かす。
 自分で抜くとき気持ちいいと思うところ。
 人のなんて抜いたことない俺のやり方じゃきっとモドカシイんじゃないだろうかとか考えて、そうならないように結構頑張ろうとしてる俺がいる。

「……ん、う」
 あ、高嶺のキスがちょっと停滞気味だ。
 もしかして、下に気を取られてる?
「……な、つき」
 キスの合間につたない呼び方で高嶺が俺を呼んだ。
「……ん?」
「…………お、まえ……容赦、ない、な……」
「………………」
 ちょっと、ぐっとくるかもしれない。
 高嶺は俺の首筋に顔を埋めてじっとし始めた。
 あぁ、なんか、イイかも。
 でかいけど、俺様だけど、男らしいけど、やっぱり可愛いって、こいつ。

「ん……なつ、き」
 ふいに体重が落ちてきた。
「……あ」
 それで、高嶺がイったことを知る。
「…………へへ」
「なにが、へへ、だ」
 すぐに高嶺は顔をあげて、ちょっとむすっとした顔を向けてきた。
 でもその奥に照れ隠しが垣間見えた。